最高のコラボレート作品「The Book」を読んだ。


これはとんでもないB級小説を読みだしてしまったのではないか、
と最初に思った。
特に、岸辺露伴が自分たちのことを「うちら」と発言してからは、
一度は本を閉じてしまったほどだ。


本日は少し早めのバレンタインデーをもらう予定になっていた。
チョコレートは余り好まないので漫画にしてもらおうと、
お決まりのビレッジバンガードへ行くことにした。
購読しているものを選ぶのもどうかと、
1巻完結の漫画を探したが、最終的に目に止まった
「The Book jojo's bizarre adventure 4th another day」を選び、
自分も少し足してハードカバーを購入したのだ。


乙一作品は何年も前に友人に紹介された「Zoo」を読んで、
とても好きになり買い漁った作家だ。「乙一×JOJO」という帯は、
とてつもなく期待させられるというものだろう。


しかし、だ。
残念ながら、もしや乙一JOJOのことは余り知らないのではなかろうか、
と感じてしまった。
人物こそ本編に登場する面々とはいえ、そのキャラクター達はどことなく堅く、
緩やかすぎる展開に、とても物語に入り込むことが出来ないでいた。


仕方なく一度本を閉じた後、子供と遊び晩御飯を軽くすまし、
とは言いつつもう少し、ということで再びその世界にぼんやりと浸りながら、
月曜日の仕事のことを考えていた。
飛来明里が事件に巻き込まれるくだりまでは。。。


結局のところ、これでもかという程、心を動かされてしまった。
乙一の描く女性、そして母親の残酷な愛情と、情念。
対照として大神照彦という漫画的(吉良吉影のようだった)な、
対照としての悪との同居は完璧に思えたし、
中盤以降、「クロスワードパズル」のようなJOJOっぽいアイテムや、
感情を乗り越え成長した億泰、仗助のあの口調とラストシーンの優しさは、
乙一が「どんだけJOJO好きなんだ?」と考えを改めさせられた。
そして、序盤からの系譜がつながっていき、最高潮のラストシーンと未来へ紡ぐ終章。


正直なところ、ここまで心を揺さぶられ涙を流してしまったのには、
自分の妻の中に、今かと待ちわびる生命があることと、無関係ではないと思う。
あまりに切ない女性の、しかし、とてつもなく大きな母親の愛情の物語は、
発刊当初では理解出来なかっただろう。
(そのお陰でこの時間からの仕事になってしまったわけだが。。。)


物語の中では、乙一らしく母親の人生の最後もしっかりと書かれている。
そして、12才という少年が、そのどうしようもない現実と運命に恐れながら、
しかし向きあうことも。


蓮見琢馬の、その生い立ちと宿命を、誰かが受け止めてくれただろうか。
飛来明里のたった一つの願いは、一見絶たれたように思えるが、
願わくば新しい生命に受け継がれようとしているのだろうか。
そう信じたい。そのための終章だと。



このブログをつけている時にも、何度か泣きそうになった。
やはりハードカバーにして良かった。良く表現されていると思う。
だが、この自分の中でも最高の物語を誰かに紹介することは無いだろう。
なぜならば、この物語を読む前にまずはJOJOを読むという、
途方も無いハードルの高さがあるからだ。
その場合、4部だけ読むという問題ではなくなる。
(そして自分の周りには恐らく読んでいる人はいない)
とても残念だ。


最後にあとがきを読んで、乙一はこの作品を作るにあたって、
本編への敬意からとてつもない時間と、労力と、苦悩を、
惜しみなくつぎ込んだことを改めて知った。

初感が恥ずかしい。